津田紘彰の【ひろメ~ル ‐心に小さな火を灯す‐ 】 - バックナンバー

【今日から始まる新しい月に】多くの著名人に愛されてきた名著より

配信時刻:2021-02-01 07:00:00

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今日から新たな一か月の始まり!

そして明日は

日本にとって本当の大晦日、

明後日がお正月になります。

(124年ぶりに2月3日始まり)

 

 

そんな素晴らしい今日は

愛読書、『心のチキンスープ』から

こんなエピソードをお届けします。

 

_____________

 

あれは、人里離れた

雪深いオレゴンの

キャンプ場での出来事だった。

 


二十年も前の話だというのに、

今でも鮮やかに覚えている。

 

 

私は妻と二歳の娘とともに、

エンストを起こした

レンタカーのなかで

困り果てていた。

 

 

病院での実習二年目を

終えたことを記念して

旅にでたのだが、

私のマスターした

医学知識は、

このキャンピングカーには

何の役にも立たなかった。

 

 

とりあえず電気スイッチを

まさぐったが、

真っ暗なままだ。

 

 

エンジンをかけようとしても、

だめだった。

車からでると、

白く逆巻く早瀬のとどろきに、

私の罵詈雑言は

かき消されてしまった。

 

 

バッテリー切れが

原因だとわかったので、

娘を妻に任せ、

数マイル先の

ハイウエーまで

歩いていくことにした。

 

 

二時間後、

私はくじいた足を引きずって

ようやくハイウエーに

たどり着いた。

 

 

トラックを呼び止めて

乗せてもらい、

最寄りのガソリンスタンドで

下ろしてもらった。

 

 

しかし、そのガソリンスタンドに

向かって歩いていくうち、

今日が日曜日だ、

ということに気がついて

目の前が暗くなった。

 

 

やはり、店は休みだった。

 

 

幸い、近くに公衆電話と

ぼろぼろの電話帳があったので、

約30キロ離れた

隣町のオートショップに電話した。

 

 

電話にでてくれた

ボブという男は、


「もう心配ないよ」


と言った。

 

 

「普段は日曜は休むんだが、

 三十分以内にそっちに行くから。」

 

 

私はほっとしたものの

いったいどのくらいの

料金を払うことになるのかと

気が気ではなかった。

 

 

ボブが乗ってきた

ぴかぴかのレッカー車で、

私たちはキャンプ場に戻った。

 

 

先に車からおりた私は、

歩き始めたボブの姿を見て

茫然とした。

 

 

足には金属製のギブスをはめ、

松葉杖までついているではないか!

 

 

彼がキャンピングカーまで

歩いていくのを見ながら、

私はまた彼への支払いを

頭の中で計算しはじめた。

 

 

「大丈夫、バッテリーが

 切れただけだよ。

 最初はちょっとがたつくけど、

 あとはスイスイ行けるからね。」

 

 

ボブはそういって、

バッテリーを充電している間、

娘に手品を見せてくれた。

娘は、ボブが耳の中から

取り出した二十五セント玉を

もらって大喜びだった。

 

 

彼が充電に使った

ブースターコードを

積み込むのを見ながら、

私はいくら支払えば

いいのかと聞いた。

 

 

「いや、何も要らないよ」


意外な答えだった。

 

 

「でも何か払わなきゃ」

 


「いらないよ」

彼は繰り返した。

 

 

「ベトナム戦争で

 この足をなくしたとき、

 ある人が俺を生死の境から

 助けてくれた。

 そのとき彼が、

 君も誰かにしてやってくれって

 言ったんだ。だから、

 俺に気兼ねはいらない。

 その代わり、

 誰かが困っているのを

 見かけたら、

 その人を助けてやってほしい」

 

 

さて、話を二十年後に

早回しして、

舞台は忙しい私の医局。

ここで私はよく、

医学生の訓練を行っている。

 

 

シンディは州外の

学校の医学生だが、

この町に住む母親のところに

滞在したいと、

私のもとで一ヶ月研修した。

 

 


その日はドラッグとアルコールのために

体がぼろぼろになった患者を

診察したばかりだった。

 

 

シンディと私は治療法について

あれこれ検討していたが、

ふいに彼女の目に涙が

浮かんできたのに気がついた。

 


「こういう話し合いはいやかい?」

と私は尋ねた。

 

 

「そうじゃないんです」

と言いつつ、

シンディは泣いた。

 

 

「実は、私の母もこの患者さんと

 同じ問題を抱えているんです。」 

 

 

それから私たちは

会議室の片隅で、

シンディの母の痛ましい

過去について話し合った。

涙を浮かべ、

シンディは一家を苦しめてきた

怒り、恥辱、敵意の歳月を

赤裸々にうち明けた。

 

 

私は彼女の母親が

治療を受けるようすすめ、

彼女を励まし、

母親が経験豊かなカウンセラーと

相談できるよう手配した。

 

 

家族のほかの者たちの

強いすすめもあって、

シンディの母は治療を

受けることを承知した。

 

 

母親は入院し、

数週間後には別人のように

生まれ変わって退院した。

 

 

崩壊寸前だったシンディ一家に、

初めて希望の光がさしてきた。

 

 

「どうやってこのご恩を

 返したらいいのでしょうか?」

シンディが私に聞いた。

 

 

私は雪のキャンプ場に立ち往生した

キャンピングカーと

ボブのことをふと思い出した。

 

 

「君も誰かにしてあげなさい。」

 

_____________

 

思いやりを、つなぐ。

 

 

 

たくさんの優しさをもらって

今日も生きている私に、

今できることは何だろう?

 

 

大切な◯◯◯さん、

幸せを祈っています。

 

いってらっしゃい。

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